「これまでの教育経験を活かして、自分の理想の教育を実現したい」 「自宅の空き部屋を使って、低リスクで独立開業できないだろうか?」
元教師や塾講師としてキャリアを積んできた方なら、一度はそんな風に考えたことがあるかもしれません。会社や組織のルールに縛られず、自分の裁量で生徒一人ひとりと向き合える個人塾の経営は、非常に魅力的な選択肢です。
特に、自宅を活用した開業は、初期費用を大幅に抑えられるため、独立への第一歩として現実的なプランと言えるでしょう。
しかし、指導には自信があっても、経営となると話は別。「本当に儲かるの?」「何から準備すればいいの?」「手続きが難しそう…」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたのために、自宅で個人塾を開業し、成功に導くための全手順を徹底解説します。事業計画の立て方から資金計画、年収のリアルな目安、そして最も重要な集客方法まで、この記事を読めばすべてが分かります。
あなたの夢を現実にするための、具体的なロードマップを一緒に見ていきましょう。
個人塾経営の年収と収益モデル

個人塾の経営を考える上で、最も気になるのが「収入」の問題です。ここでは、年収のリアルなシミュレーションや料金設定の考え方、成功と失敗を分けるポイントについて解説します。
「塾経営は儲からない」は本当か
「塾の経営は儲からない」という話を耳にしたことがあるかもしれません。これは、半分本当で半分嘘です。結論から言えば、個人塾の経営はやり方次第で十分に収益を上げることが可能です。
儲からないと言われる主な理由は、以下の3つです。
一方で、成功している個人塾は、明確なコンセプトを持ち、適切な料金設定と効率的な集客戦略を実行しています。「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確にし、計画的に経営すれば、個人塾は十分に成り立つビジネスです。
生徒数で見る年収シミュレーション
では、実際にどれくらいの年収が見込めるのでしょうか。ここでは、月謝を生徒1人あたり2万円と仮定し、経費(水道光熱費、通信費、教材費など)を売上の20%として、生徒数別の年収をシミュレーションしてみましょう。
| 5人 | 120万円 | 24万円 | 96万円 |
| 10人 | 240万円 | 48万円 | 192万円 |
| 15人 | 360万円 | 72万円 | 288万円 |
| 20人 | 480万円 | 96万円 | 384万円 |
| 30人 | 720万円 | 144万円 | 576万円 |
もちろん、これはあくまで一例です。月謝や経費率、指導形態によって年収は大きく変動します。しかし、生徒が20人を超えてくると、会社員の平均年収に近い収入を得ることも現実的な目標として見えてきます。まずは、目標とする年収から必要な生徒数を逆算してみるのがおすすめです。
授業料・月謝の料金設定方法
授業料は、塾の収益を直接左右する非常に重要な要素です。料金設定で失敗しないためには、以下の3つの視点を持ちましょう。
これらの要素を総合的に判断し、学年別、コース別(例:週1回コース、通い放題コースなど)に料金体系を組み立てていきましょう。
成功事例と失敗事例の分析
成功する個人塾と、残念ながらうまくいかない塾には、明確な違いがあります。
成功事例
失敗事例
成功の鍵は、指導力だけでなく、経営者としての視点を持つことです。特に、自分の塾の「強み」を明確にし、それを必要とする生徒・保護者に的確に届ける努力が不可欠です。
自宅で塾を開業する7つの手順

「何から始めればいいか分からない」という方のために、自宅で塾を開業するための具体的な手順を7つのステップに分けて解説します。この通りに進めれば、誰でも迷わず準備を進められます。
ステップ1:コンセプトと事業計画の策定
開業準備の中で最も重要なのが、このコンセプト策定と事業計画です。ここがブレると、後のすべての活動がうまくいきません。
- 【コンセプトの明確化】
「誰に」「何を」「どのように」教えるのかを具体的に定義します。- ・誰に(ターゲット)例:近所の〇〇小学校に通う、算数が苦手な生徒何を(指導教科・内容) 例:学校の補習を中心とした算数・国語
- ・どのように(指導形態)
例:定員4名までの個別指導形式
- 【事業計画の作成】
コンセプトを元に、より具体的な計画書を作成します。金融機関から融資を受ける際にも必要になります。主に以下の項目を盛り込みましょう。- ・事業の目的・理念塾のコンセプト、強み市場・競合の分析料金設定集客方法収支計画(売上、経費、利益の予測)
- ・資金計画(必要な資金と調達方法)
ステップ2:開業資金の計画と資金調達
事業計画で立てた収支計画を元に、必要な資金を具体的に計算し、調達方法を検討します。
- 【必要な資金の洗い出し】
初期費用(備品など)と、開業後しばらく売上がなくても事業を継続できるための運転資金(最低3ヶ月分)を計算します。 - 【資金調達方法の検討】
自己資金でまかなうのが理想ですが、不足する場合は融資を検討します。個人事業主の強い味方である日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などが代表的です。
ステップ3:必要な資格の確認と法的手続き
塾の開業には特別な資格は不要ですが、事業主として必要な手続きがあります。
- 【開業届の提出】
事業を開始してから1ヶ月以内に、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。 - 【青色申告承認申請】
節税効果の高い青色申告をしたい場合は、開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。 - 【その他】
契約内容によっては「特定商取引法」に関する表示義務なども発生するため、事前に確認が必要です。
ステップ4:備品準備と学習環境の整備
生徒が集中して学習できる環境を整えます。自宅開業ならではの工夫も必要です。
- 【必要な備品のリストアップと購入】
- ・机、椅子
- ・ホワイトボード、マーカー
- ・パソコン、プリンター
- ・教材、参考書、辞書
- ・文房具類
- ・スリッパ、消毒液など
- 【学習環境の整備】
- ・生活スペースとの区切り
- パーテーションを設置するなど、プライベート空間と学習空間を明確に分けましょう。
- ・防音・騒音対策
- 生徒の声が近隣の迷惑にならないよう、防音カーペットを敷くなどの配慮が必要です。
- ・整理整頓と清潔感
- 生徒が安心して通えるよう、常に清潔で整頓された環境を心がけましょう。
ステップ5:生徒募集(集客)の開始
準備が整ったら、いよいよ生徒募集を開始します。開校予定日の2〜3ヶ月前から始めるのが理想的です。
- 【オフライン集客】
チラシを作成し、近隣へのポスティングや新聞折込を行います。ターゲットが住んでいそうなエリアに絞って配布するのが効果的です。 - 【オンライン集客】
簡単なホームページやブログ、SNS(InstagramやFacebookなど)を開設し、塾の情報を発信します。 - 【口コミ】
友人や知人に塾を始めることを伝え、紹介をお願いするのも非常に有効な手段です。
ステップ6:体験授業の実施と入塾案内
問い合わせがあったら、体験授業や入塾説明会を実施します。ここは、あなたの塾の魅力を直接伝える絶好の機会です。
- 【体験授業】
実際の授業の雰囲気を味わってもらい、指導方針や講師との相性を確認してもらいます。 - 【保護者面談】
体験授業後に保護者と面談し、塾のコンセプトや料金体系を丁寧に説明します。保護者の悩みや要望をしっかりとヒアリングし、不安を解消することが入塾の決め手になります。 - 【入塾手続き】
契約書や規約を準備し、入塾手続きを進めます。
ステップ7:開校と運営改善
生徒が集まり、いよいよ開校です。しかし、開校はゴールではなくスタートです。
- 【質の高い授業の提供】
生徒の成績向上と目標達成に全力でコミットします。 - 【保護者とのコミュニケーション】
定期的な面談や報告を通じて、信頼関係を構築します。 - 【PDCAサイクルを回す】
生徒や保護者からのフィードバックを元に、常に授業内容や運営方法を改善していく姿勢が、塾の成長につながります。
自宅塾の開業資金と運転資金の目安

自宅で塾を開業する最大のメリットは、資金を大幅に抑えられる点です。ここでは、具体的にどれくらいの費用がかかるのか、その内訳を見ていきましょう。
初期費用(イニシャルコスト)の内訳
初期費用とは、開業時に一度だけかかる費用のことです。自宅開業の場合、テナントを借りる際の保証金や礼金、仲介手数料などが一切かからないため、一般的には30万円〜100万円程度に抑えることが可能です。
- 【内装・リフォーム費(必要な場合)】
0円〜30万円
壁紙の張り替えや、間仕切りの設置など。DIYで済ませれば費用を抑えられます。 - 【備品購入費】
20万円〜50万円
机、椅子、ホワイトボード、PC、プリンターなど。中古品をうまく活用するのも一つの手です。 - 【教材費】
5万円〜10万円
指導する学年や教科に応じた教材を揃えます。 - 【広告宣伝費】
5万円〜10万円
チラシの印刷・ポスティング費用、ホームページ作成費用など。
運転資金(ランニングコスト)の内訳
運転資金とは、塾を運営していく上で毎月継続的にかかる費用のことです。売上が安定するまでの数ヶ月分は、あらかじめ準備しておく必要があります。
- 【水道光熱費】
1万円〜3万円
生徒が増え、授業時間が長くなるほど増加します。 - 【通信費】
5,000円〜1万円
インターネット回線や電話代など。 - 【教材費・消耗品費】
5,000円〜2万円
コピー用紙、プリント代、文房具など。 - 【広告宣伝費】
0円〜3万円
継続的にチラシを配布する場合や、Web広告を出す場合にかかります。
自己資金はいくら必要か
安心して開業するためには、「初期費用」+「運転資金の3〜6ヶ月分」+「当面の生活費」を自己資金として用意しておくのが理想です。
例えば、初期費用が50万円、月々の運転資金が5万円の場合、 50万円 + (5万円 × 6ヶ月) = 80万円 これに加えて、ご自身の生活費を数ヶ月分確保しておくと、焦らずに事業の立ち上げに集中できます。
日本政策金融公庫の融資制度
自己資金だけでは不安な場合、融資を受けることも選択肢の一つです。特に、これから事業を始める個人事業主にとって、日本政策金融公庫は非常に心強い味方です。
「新創業融資制度」は、無担保・無保証人で利用できる場合があり、多くの起業家が活用しています。しっかりとした事業計画書を作成し、相談してみる価値は十分にあります。
塾開業に必要な資格・許認可・手続き

「塾を開くには、何か特別な資格がいるのでは?」と心配される方もいますが、手続き自体はそれほど複雑ではありません。ポイントを押さえて、スムーズに準備を進めましょう。
教員免許は不要
結論として、塾を開業するために教員免許や特定の資格は法律上一切不要です。あなたのこれまでの指導経験や実績そのものが、最大の「資格」となります。
ただし、生徒や保護者からの信頼を得るという意味では、教員免許や英検、その他関連資格を持っていることは大きなアピールポイントになります。ホームページやチラシには、ぜひ経歴として記載しましょう。
個人事業の開業届の提出
事業を始めたら、必ず行わなければならないのが「開業届」の提出です。
- 【提出書類】
「個人事業の開業・廃業等届出書」 - 【提出先】
納税地を管轄する税務署 - 【提出期限】
事業を開始した日から1ヶ月以内
この届出を出すことで、あなたは正式に個人事業主となります。同時に、節税メリットの大きい「青色申告承認申請書」も提出しておくことを強くおすすめします。
法人設立と個人事業主の違い
開業当初は、ほとんどの場合「個人事業主」としてスタートするのが一般的です。
- 【個人事業主】
開業手続きが簡単で、コストもかかりません。まずは個人事業主として始め、事業が軌道に乗るのを目指しましょう。 - 【法人(株式会社など)】
社会的信用度が高く、税制面で有利になる場合がありますが、設立や維持にコストと手間がかかります。
年間の利益が800万円〜1,000万円を超えるあたりが、法人化を検討する一つの目安と言われています。まずは個人事業主としてスモールスタートし、事業の成長に合わせて法人化(法人成り)を考えましょう。
特定商取引法に関する表示義務
月謝制の学習塾は、契約期間と金額によって「特定商取引法」における「特定継続的役務提供」に該当する場合があります。
具体的には、「期間が2ヶ月を超え、かつ金額が5万円を超える」契約が対象となります。この場合、契約内容を明記した書面を交付する義務などが発生します。トラブルを避けるためにも、契約書や規約は専門家のアドバイスを受けながらしっかりと作成しましょう。
成功する個人塾の集客方法

どれだけ素晴らしい授業を提供できても、生徒が集まらなければ経営は成り立ちません。ここでは、自宅での個人塾開業に効果的な集客方法を4つ紹介します。
コンセプトの明確化と差別化
集客の成功は、塾のコンセプトがどれだけ魅力的かで決まります。
「誰でも歓迎」という塾よりも、「〇〇中学校の生徒のための、定期テストの点数を50点アップさせる専門塾」のように、ターゲットと提供価値が明確な方が、保護者の心に響きます。
あなたの強みを活かせる、独自のポジションを見つけることが最初のステップです。
チラシ・ポスティングでの地域密着集客
自宅で開業する場合、メインターゲットは間違いなく近隣に住む子どもたちです。そのため、昔ながらのチラシやポスティングは、今でも非常に強力な集客ツールです。
口コミ・紹介を増やす施策
個人塾にとって、最も信頼性が高く、成約率も高いのが「口コミ」と「紹介」です。
ホームページやSNSを活用したWeb集客
現代において、Webでの情報発信は必須です。チラシを見て興味を持った保護者は、必ずと言っていいほど塾の名前を検索します。
自宅で塾を開業するメリット・デメリット

最後に、自宅で塾を開業することのメリットとデメリットを整理しておきましょう。良い点も大変な点も理解した上で、最終的な判断をすることが大切です。
メリット①:初期費用を抑えられる
自宅開業の最大のメリットは、初期費用を劇的に抑えられることです。テナントを借りる場合、保証金や家賃、内装工事費で数百万円かかることも珍しくありません。自宅であれば、これらの費用がほぼゼロになるため、低リスクで事業をスタートできます。
メリット②:通勤時間がなく柔軟に働ける
通勤時間がなくなることで、その時間を授業準備や自己研鑽に充てることができます。また、授業時間以外のスケジュールを自分でコントロールしやすいため、家事や育児と両立しやすいのも大きな魅力です。ワークライフバランスを重視したい方には最適な働き方と言えるでしょう。
デメリット①:プライベートとの線引き
仕事場と生活空間が同じであるため、オンとオフの切り替えが難しくなることがあります。「休日なのに仕事のことが頭から離れない」「家族がくつろいでいる横で仕事をするのが気まずい」といった状況も考えられます。仕事用の部屋を明確に分ける、営業時間をきっちり決めるなどのルール作りが重要です。
デメリット②:近隣住民への配慮が必要
生徒の出入りが多くなると、騒音や駐輪問題などで近隣トラブルに発展する可能性があります。特に集合住宅(マンションなど)の場合は、規約で事業活動が禁止されていないか、事前に必ず確認が必要です。
開業前に近隣の方へ挨拶回りをしておく、生徒にはマナーを徹底させるなど、日頃からの配慮が不可欠です。
まとめ
今回は、自宅で個人塾を開業するための方法について、年収の目安から具体的な手順、資金計画、集客のコツまでを網羅的に解説しました。
自宅での塾開業は、しっかりとした事業計画と行動力さえあれば、あなたの教育経験を最大限に活かせる、非常にやりがいのある仕事です。低リスクで始められ、自分の裁量で理想の教育を追求できる魅力があります。
この記事で紹介した7つのステップを参考に、まずはあなたの塾の「コンセプト」と「事業計画」を紙に書き出すことから始めてみませんか?
「どんな生徒に、どんな価値を提供したいか?」
その想いを形にすることが、成功への第一歩です。あなたの挑戦を心から応援しています。



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